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平成18年度第1回高卒認定試験 国語 大問4

【書き下し文】

吾少(われわか)きとき学(がく)に志有(こころざしあ)りき。不幸(ふこう)にして早(はや)く得(え)たること、吾子(ごし)と同年(どうねん)なり。吾子(ごし)の得(え)たるも、亦早(またはや)からずとい謂(い)ふべからざるなり。吾今自(われいまみずか)ら以(もつ)て足(た)らずと為(な)さんと欲(ほつ)すと雖(いへど)も、而(しか)も衆且(しゅうか)つ妄(みだ)りに之(これ)を推(お)す。嗚呼(ああ)、吾子其(ごしそ)れ此(ここ)より去りて、学(がく)に務(つと)めよや。博(ひろ)く学(まな)んで約(やく)して取(と)り、厚(あつ)く積(つ)みて薄(うす)く発(はつ)せよ。吾吾子(われごし)に告(つ)ぐること、此(これ)に止(とど)まる。子帰(しかへ)るとき京師(けいし)を過ぎて問へ。轍子由(てつしいう)と曰(い)ふ者有(あ)り。吾(わ)が弟(おとうと)なり。其(そ)れ亦是(またこれ)を以(もつ)て之(これ)に語(つ)げよ。(『古文真宝後集』)

*『古文真宝後集』は、宋の黄堅の編による詩文集。前集、後集からなり、前集十巻には、漢代から宋代までの著名な詩、後集十巻には、戦国末から宋代までの著名な辞賦、文章を収めている。

【口語訳】

 私は年少の頃、学問を志していた。不幸なことに若くして進士に合格してしまったのは、君と同じ年のことであった。君が進士に合格したのも、早くないと言うことはできない。私が今、自分ではまだまだ(学問的に)未熟だ(からもっと勉強をしよう)としても、人々はむやみに私を(官職に)推す。ああ、君はここから立ち去って学問につとめたまえ。ひろく学問をして多くを知り、それを用いる際には慎ましく引き締めて、余計なことをせず、厚く学識を積み、それを外に出すときには控えめにしたまえ。私が君に言うことは、これに尽きる。君が帰る途中、都を通るときに訪ねてほしい。轍子由という者がいる。私の弟だ。どうか彼にもこのことを話してくれたまえ。

〔 問1 〕
一見矛盾した表現に込められた筆者の意図を問う問題。「早得」〔=若くして進士に合格する〕という一見喜ばしいことを蘇軾は「不幸」と表現している。その理由を考える際、ヒントになるのは、蘇軾が友人にどんなことを勧めているか=自身もできたらどうしたいのか、である。友人に「嗚呼、吾子其去此、而務学也哉」と郷里に帰って学問に励むことを勧める蘇軾の言葉は、冒頭の「吾少也有志於学」と合わせると、学問に打ち込む生活への憧れと読める。それがかなわないのは、「衆且妄推之」すなわち人々が官職を勧めるためである、と述べられている。つまり、役人生活をする限り学問に打ち込むことは難しいのであり、その役人生活に若くして入ってしまったことは学問に打ち込む期間がほとんどなかったことを意味し、学問をしたいと願う者にとっては「不幸」なことであった、ということである。したがって正解は1「自分では学問が不十分だと思ってもっと勉強したいと望んでも、周囲がむやみに官職にすすめようとするから。」

〔 問2 〕
二重否定の構文の意味を問う問題。「不可謂不〜」は「〜ずと謂ふべからず」〔=〜ないと言うことはできない=まったく〜だ〕という意味で「〜」の部分を強く肯定する句法である。冒頭の「亦」は「A〜。Bも亦〜」〔=Aが〜する。Bもまた〜する〕という意味で違う主体が同様の行動をしたり同様の状態であったりすることを表す語である。傍線部の主体が「吾子(=張琥)之得〕〔=君が進士に合格したこと〕であるのは「(吾=蘇軾)早得」を受けてのことと考えられる。したがって正解は4「蘇軾と同様に、張琥が合格した年齢も若かったということ。」

〔 問3 〕
書き下し文を示して返り点の付け方を問う問題。「足らずと為さん」は一字ずつ返るので、レ点が連続する。「為さんと欲す」は一字以上隔てて返るので一・二点。最後は「欲すと雖も」はレ点。したがって正解は3

〔 問4 〕
対句という漢文に特徴的な表現をヒントにそこに込められた「学」に対する姿勢を問う問題。傍線部分と対句になっている、直前の「博学而約取」がヒントになる。これは「ひろく学問をして多くを知り、それを用いる際にはつつましく引き締めて余計なことをしない」という意味が注にあり、学び方と学んだものの使い方におけるあるべき態度の対比性が説かれている。傍線部分を見ると、「厚」が「博」に、「積」が「学」に、「薄」が「約」に、「発」が「取」に対応していることが分かる。これらは皆、漢字の意味から考えてもほぼ同様のことを言っていると考えられる。「厚」「博」はともに積極的な姿勢を、「薄」「約」はともに謙虚な姿勢を表していると考えられるので、正解は2「意欲的であるが控え目でもある。」

〔 問5 〕
本文との内容合致を問う問題。内容合致問題は消去法で考えるのがよい。1は、「人々の期待を重荷に感じている」が誤り。「衆且妄推之」ことが、自分が学問に専念することの妨げになっていると述べてはいるが「重荷」だ、とは言っていない。3は、「自分の専門分野を確立すること」が誤り。張琥への助言は「博学而約取、厚積而薄発」という「学」に関わる姿勢についてのもので、専門分野についてはまったく触れていない。4は「科挙に合格して立身出世しようとは思わなかった」が誤り。蘇軾の弟が科挙に対してどのように考えていたのかはこの文章をを読んだだけではまったく分からない。ただ、現在「京師」にいるということから考えて、あるいは科挙を受けようとしているのかもしれない。5は、「学友となるように頼まれた」が誤り。蘇軾は張琥に伝言を頼んだだけで、そのようなことはまったく述べていない。したがって正解は2「蘇軾は、腰を据えてじっくりと学問に専念し修養して自己を高めることが大切だと考えていた。」

※平成19年度受験対策 高認試験問題集(旺文社刊)から抜粋

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