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平成19年度第1回高卒認定試験 国語 大問4

【書き下し文】

子発秦しはつしんむるも、ぐんりやうつ。ひとをしておうはしめて、りてかへつてはははしむ。母使者ははししゃひてはく、「士卒しそつ恙無つつがなきをたるや。」と。こたへてはく、「士卒しそつ菽粒しゆくりふあはかちてこれらふ。」と。又問またとふ、「将軍しやうぐん恙無つつがなきをたるや。」と。こたへてはく、「将軍しやうぐん朝夕芻豢てうせきすうくわん黍粱しよりやうす。」と。子発秦しはつしんやぶりてかえるも、母門ははもんぢてれず。ひとをしてこれめしめてはく、「越王句践えつおうこうせんちしをかずや。かく醇酒じゆんしゆ一器いちきけんずる者有ものあり。王人おうひとをしてかう上流じやうりうそそがしめて、士卒しそつをして下流かりうましむ。あじくわふるにおよばざれども、士卒戦しそつたたかふことみづかせり。」と。
(『列女伝』)

※『列女伝』は前漢の学者、劉向が編んだ、神話時代から前漢に至るまでの傑出した女性たちの伝記集である。

【口語訳】

子発は秦を攻めたが、その軍隊は食料がなくなってしまった。(子発は)使者に(食糧の補給を)王にお願いさせて、そのついでに(使者を)自分の家まで行かせて母を見舞わせた。母が使者に尋ねて言うことには、「兵士は無事ですか。」と。答えて言うことには「兵士は豆と雑穀の屑を分け合って食べています。」と。さらに尋ねることには「将軍は無事ですか。」と。答えて言うことには「将軍は朝晩ぶたや上等の黍飯を食べています。」と。子発は秦を破って帰ったが、母は門を閉ざして中に入れなかった。人に息子を責めさせて言うことには、「おまえは越の王である句践が呉を討った(時の)話を知らないのですか。客から、よく熟した味の濃いお酒一瓶を贈られた時、王は人に(そのお酒を)川の上流で注がせ、兵士には下流で飲むようにさせたのです。お酒は(水で薄まってしまい)おいしさを感じるには至りませんでしたが、兵士たちは、(王の心に感動して)おのずと五倍もの力を出して戦ったのです。」

〔 問1 〕

明示されていない主体と対象を問う問題。主体や客体が書かれていないのは、文脈等から読み手がその人物の見当をつけられる、つまりそこまでの主体と同一であったり、その行動を取る必然性があったりする場合である。まず、傍線部の直前「使人請於王」の主体は、王に使者を送ることのできる人物なのだから、将軍である子発と考えられる。次に傍線部の主体を考えるとき注意すべきは、「其母」とは誰の母か、である。使者との会話やその後の行動を見れば、将軍子発の母であることがわかる。また、傍線部は「問はしむ」という使役になっているので、誰かが子発の母を訪問させたということである。そこで、傍線部の主体も直前の主体である子発で、子発が王に送った使者についでに自分の母親を訪問させた、と考えられる。したがって正解は2「子発が使者に。」

〔 問2 〕

指示語の指示内容を問う問題。指示語の指示内容は前に書かれているのが原則である。傍線部B「之」は「食」という述語から考えても直前の「菽粒」を指すと考えられる。傍線部D「之」は子発の「母」が人を介して責めた人物である。直前には、子発が帰ってきたが「母」は門を閉じて中に入れなかったことが書かれており、「之」が門の外に締め出された子発と考えられる。したがって正解は1「B 菽粒 D 子発」

〔 問3 〕

子発の母が秦との戦いに勝って凱旋した息子を締め出した理由を問う問題。子発の母が秦との戦いにおける息子の様子について知りえたのは使者の口から語られたことだけである。では、どのようなことが語られたかというと、「士卒」は「菽粒」=貧しい食事=を分かち合って食べている一方、「将軍」である子発はいつも「芻豢・黍粱」=豊かな食事=を食べている、ということであった。この話を聞いた子発の母が述べているのは、越王句践が呉を討ったときの、(良い酒をもらった句践はそれを独り占めせずに、川に注いで兵士たちに分け与えた)という逸話を通じて、兵士を尊重することの大切さを子発に諭しているという内容である。したがって正解は5「将としての才はあっても、部下のことを思いやる気持ちを持たない態度に反省を促すため。」

〔 問4 〕

返り点のつけ方を問う問題。まず「客に」と、「客」が初めに読まれるので「客」に下点が付いている4は誤りである。次に、「醇酒一器を献ずる」と、「器」から二字以上離れた「献」に返るので、「器」に一点「献」に二点が付いていない23も誤りである。そして、傍線部の最後が「者有り」と、「者」から「有」に返るので、「者」に返り点が付いていない1も誤り。したがって正解は5

〔 問5 〕

本文全体から越王句践の挿話がどのような意味を持っているのかを問う問題。問3で見たように子発の母は部下への思いやりに欠ける子発の振る舞いに反省を促そうとして子発を締め出したのだから、この挿話も子発に反省を促す内容だと考えられる。傍線部の前には、客から美酒をもらった越王句践が、川上からそれを流して川下に待機させた兵士たちに飲ませた、ということが書かれている。そこから考えると「味」とは水の味で「不及加美」とは、おいしさを感じるには至らなかった、ということ。「戦自五」とは、「五」は述語なので、五倍の力を出した、と考えられる。ではなぜ五倍もの力を出したのか。それは自分たちのことを思ってくれる句践の行動に感動したからである。したがって正解は3「越王句践の心遣いを意気に感じた部下たちは、気力をいっそうふりしぼって戦ったということ。」

※平成20年度受験対策 高認試験問題集(旺文社刊)から抜粋

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